東京高等裁判所 昭和58年(ラ)201号 決定
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【判旨】
よつて按ずるに、本件訴訟は、札幌市内において経営をしていた飲食店につき、建物所有者から立退きを求められ営業を継続することができなくなつた相手方が、右事態は抗告人の債務不履行に因つて生じたものであるとして、抗告人に対して提起した損害賠償請求訴訟である。右損害賠償義務の履行地は債権者である相手方の住所(東京都下)であるから、本件について原審たる東京地方裁判所は義務履行地の裁判籍による管轄権を有するものというべきであつて、所論のうち管轄違いをいう部分は理由がない。しかしながら、本件の請求原因たる事実関係は、専ら前記店舗の使用権原をめぐるものであり、記録によれば、抗告人のほか、右事実関係に最も深く関与していると思われる村山修、長谷川義一、金泉政一らの関係者はいずれも札幌市内に居住している(もつとも、相手方のほか、相手方が前記店舗にかかわりをもつ発端となつた村山修・相手方間の営業権譲渡契約の立会人となつた渡辺敏彦も東京都に居住しているが、抗告人と相手方との間の交渉は右契約締結後に生じたものであつて、右渡辺がこの交渉に直接関与したことを認めるべき資料は存しない。)ことが窺われる。また、本件の請求原因事実の内容はそれ自体かなり複雑であり、相手方の請求の当否を決するには前記関係者らにつき直接に詳細な供述を得る必要があるであろうことを看取するに難くない。以上加えて、相手方は、自ら進んで札幌市において事業活動を始めたものであり、本件紛争はこれに関連して生じたものであることをも考慮すると、本件訴訟を東京地方裁判所で審理することは訴訟の著しい遅滞を招くおそれがあり、当事者間の衡平にも反するといわなければならず、右訴訟は民事訴訟法三一条により抗告人の普通裁判籍所在地を管轄する札幌地方裁判所に移送するのが相当であつて、所論はこの点において理由がある。
(倉田卓次 下郡山信夫 加茂紀久男)